AI時代の外注化術5. 外注化の事前準備 – タスクの洗い出しと細分化

Business female employee with many conflicting priorities arranging sticky notes commenting and

目次

外注化の事前準備として、タスクの洗い出しと細分化を行います。外注化しない場合でもこの作業をやっておくと、タスク管理や時間管理がとてもスムーズになります。ぜひやってみましょう。

1. 自分の業務を「見える化」する

最初に自分の業務を「見える化」してみましょう。ふだんやっていることは特に意識せずに流れでできてしまうため、いざ外注化しようと思っても何を外注化すればいいのかがわかりません。

日頃やっている、Kindle本を書いて出版することや、ブログ記事を書いて投稿することなどをそれぞれ細分化します。「Kindle本を書いてください」と外注化することはできなくても、その一部である「Kindle本の表紙画像をデザインする」や、「原稿の校正をする」などは外注化することができそうですよね。ブログ記事についてもかなりの部分が外注化できます。

また、あなたのコア業務だけでなく、経理や顧客対応などの周辺業務も外注化を検討したい場合は、それらについても手順を細分化してみましょう。

「細分化」というのがピンと来ないなら、何かタスクを行うごとにその動作を時系列に沿ってメモするのがおすすめです。後で、具体例を挙げるので参考にしてください。

2. 外注化できるタスクの選定方法

タスクを細分化したら、それぞれのタスクについて選定します。選定は二段階で行います。

  1. 自分にはできないタスクと、できるタスク
  2. 自分でなければできないタスクと、他の人でもできるタスク

まず「自分にはできないタスク」がわかりやすいですよね。私にとって一例を挙げると、Kindle本の表紙デザインは私にはできません。ですから、クラウドソーシングサイトでデザイナーさんに依頼します。

「自分にはできないタスク」を除くと、あとは好き嫌いはどうあれ、自分ができるタスクだけが残ります。ここで二段階目に進みましょう。

二段階目は自分でもできるタスクだけど、自分でなければできないタスクと、他の人でもできるタスクに分けることができます。

次の段落で、実際に細分化の例を見てみましょう。

3. タスク細分化の実践例

この段落ではタスクの細分化の実例を挙げます。

あなたがWordPressのウェブサイトを持っていて、ブログを更新しているとします。このブログ記事を更新する作業を細分化します。

  • 記事のトピックを決める
  • リサーチする
  • 狙うキーワードを決める
  • 記事の章立てをする(書く内容の骨組みを作る)
  • 記事タイトルを仮決めする
  • 章見出しを仮決めする
  • 記事本文を書く
  • 章見出しを内容・SEOの観点から見直す
  • 記事タイトルを内容・SEOの観点から見直す
  • アイキャッチ画像に使う画像を選定する
  • アイキャッチ画像に使う画像をダウンロードする
  • アイキャッチ画像を加工・編集する
  • 記事のカテゴリやタグを決める
  • 記事のスラッグを決める
  • 記事の公開日を決める
  • WordPressに記事を入稿する
  • アイキャッチ画像をWordPressのメディアライブラリにアップロードする
  • アイキャッチ画像を記事に設定する
  • WordPressで公開日など投稿設定をする

わお! たった一記事更新するだけでも大変ですね。

では次に、Kindle出版というタスクについて、企画するところから細分化してみましょう。原稿をGoogleドキュメントで下書きし、Wordファイルに変換して縦書きの書籍として出版することにします。

  • Kindle本のトピックを決める
  • リサーチする
  • 企画
  • 原稿をGoogleドキュメントで下書きする
  • 表紙画像を作る
  • 目次の作成
  • プロフィール文の作成
  • ご購読特典・メルマガ登録プレゼント・LINE@登録プレゼントへの誘導
  • あとがき作成
  • GoogleドキュメントをWordファイルに変換
  • Wordファイルで縦書きに変換
  • 原稿の確認と修正
    • 字下げ
    • 漢数字へ変換
    • アルファベットを全角に変換(または半角・横倒しのまま維持するかの判断)
    • 画像の位置
    • 表紙画像の挿入
    • 目次のハイパーリンクを確認
    • 原稿内のハイパーリンクを確認
    • 原稿内のQRコードの飛び先を確認
  • アップロードするKindleファイルをKindle Previewerで確認する
    • Kindle Previewerで確認する項目
      • 表紙の見え方
      • 文章、誤字脱字
      • 数字やアルファベットの見え方
      • 文字化けがないか
      • 画像の見え方
      • 目次のハイパーリンクが正しく機能しているか
      • 本文内のハイパーリンクが正しく機能しているか
      • 本文内のQRコードが正しく機能しているか
      • 論理目次が正しく機能しているか
    • Kindle Previewer上でデバイスを変更してみる
    • Kindle Previewer上でフォントの種類やフォントサイズを変更してみる
  • KDPへ出版申請
    • 著者名等の入力
    • 原稿、表紙画像のアップロード
    • 値付け
    • 審査に提出する

だいたいこんなところでしょうか。

最後に、情報発信の一つとしてYouTubeで動画を公開しているとします。顔出し動画で、画面共有はしない動画形式だと仮定します。また、限定公開ではなく、全体に予約公開することにします。

  • 動画のトピックを決める
  • リサーチする
  • 企画
  • 話す内容を箇条書きにする
  • (台本を作る)
  • 収録する
  • 動画を編集する
    • ノイズ除去
    • 音量調整
    • トークの間の空いたところをカット編集
    • 挿入するBロールを決める
    • Bロールの挿入
    • BGMや効果音を決める
    • BGMや効果音の挿入
    • テロップを入れる
    • 書き出す
  • サムネイル画像を作る(私のやり方)
    • サムネイル画像に入れる文言を決める
    • YouTubeのサムネイル画像テンプレートを選ぶ
    • 収録した動画の一部を静止画として取り出す
    • Canvaで背景除去して自分の画像を載せる
    • テキストを入れる
    • 画像としてダウンロードする
  • 概要欄に入れる内容を決める
    • タイムスタンプ
    • ハッシュタグ
    • CTA
    • 関連動画のURL
  • YouTubeに動画をアップロードする
  • YouTubeにサムネイル画像をアップロードする
  • YouTubeで概要欄を設定する
  • YouTubeで再生リストを設定する
  • YouTubeで公開日を設定する

YouTubeをもっと丁寧にやっている方は、終了画面を設定するなど、ここにはないタスクも存在すると思いますので、ご自身がやっていることを事細かに書き出してください。

こうしてタスクを分解するときのポイントは、「これ以上細分化できないところまで細分化する」ということです。

例えばブログの記事を投稿するタスクにおいて、記事が書き上がった段階でも「WordPressに投稿する」の一言で済ませてはいけません。実際に記事を投稿するとき、あなたは以下の細かなタスクを行っているはずです。

  • 記事のカテゴリを決める
  • 記事のタグを決める
  • 記事のスラッグを決める
  • 記事の公開日を決める
  • WordPressに記事を入稿する
  • アイキャッチ画像をWordPressのメディアライブラリにアップロードする
  • アイキャッチ画像を記事に設定する
  • WordPressで公開日など投稿設定をする

次の段落で、これらのタスクをどうするか、どうしたらラクになるかを見極めていきます。お楽しみに!

4.洗い出したタスクを見極める

前の段落でやったようにタスクを細分化すると、ちょっと感心してしまいませんか。「私ってよくやってるよなぁ」って。まずは自分を褒めましょう!

そしてこうも思うはずです。「こんなにやることが多いなら、そりゃあ気が重くなって当然だわ」。そうなんです。だからこそ、タスクを見極めて、外注化するか、AIで時短するかを決めていくのです。

余談ですが、細分化したタスクを眺めると、私はちょっと遠い目になって呆然としてしまうことがあります。こんなにたくさんのことを無意識にやっているのか……というのが最初に思うこと。

次に思うのは、「これを外注化かAIを使うか自分でやるかに分類するなんて、気が遠くなりそう」「むしろ無意識にでも自分でやる方がラクなのではないか?」ということです。現実を見なければよかった、と思うことすらあります。でも大丈夫。これからやるのは将来のあなたがもっとラクになりながら事業がスピードアップするための作業です。かつ、何度もやることではありません。だから気を取り直して進めていきましょう。

さて、細分化したタスクの選定は二段階で行うとお伝えしました。

まずは、自分にはできないタスクと、できるタスクを分けます。

次に、自分でできるタスクのうち、自分でなければできないタスクと、他の人でもできるタスクに分けます。「自分ができることのうち、絶対に自分にしかできないこと」を明確にするのがポイントです。

次に、他の人でもできるタスクのうち、自分の中で、面倒なことや苦手なこと、時間のかかることと、ラクラクできるものに分けてみてください。

ブログ記事を書いてWordPressに投稿する例で考えてみましょう。


  • 記事のトピックと結論を決める
  • リサーチする
  • 狙うキーワードを決める
  • 記事の章立てをする(書く内容の骨組みを作る)
  • 記事タイトルを仮決めする
  • 章見出しを仮決めする
  • 記事本文を書く
  • 章見出しを内容・SEOの観点から見直す
  • 記事タイトルを内容・SEOの観点から見直す
  • アイキャッチ画像に使う画像を選定する
  • アイキャッチ画像に使う画像をダウンロードする
  • アイキャッチ画像を加工・編集する
  • 記事のカテゴリやタグを決める
  • 記事のスラッグを決める
  • 記事の公開日を決める
  • WordPressに記事を入稿する
  • アイキャッチ画像をWordPressのメディアライブラリにアップロードする
  • アイキャッチ画像を記事に設定する
  • WordPressで公開日など投稿設定をする

私が以前ブログ運営の大半を外注化していたときは、以下の項目を自分でやることとして、他の項目をすべて外注化しました。

当時、私が自分でやっていたことは……

  • 記事のトピックと結論を決める
  • リサーチする
  • 狙うキーワードを決める
  • 記事の章立てをする(書く内容の骨組みを作る)
  • WordPressで公開日など投稿設定をする

私がやっていたのは、これだけです。記事本文の作成はもちろん、記事タイトルや章見出しの作成も、アイキャッチ画像の選定や作成もワーカーさんにお願いしていました。

当然、外注化の範囲が広くなるとコストがかさみます。金額的なコストはもちろん、準備や指示出し、成果物の確認といったお金とは別のコストであるコミュニケーションコストもかかってきます。これらすべてが厄介で、「自分でやる方がラク」と思いがちなんですよね。私も新しいタスクを外注化するときは未だにそう感じるので、その気持ちはよくわかります。

では、ここでAIに任せられる部分はないか?を考えてみましょう。

5.「外注化」と「AI活用」の見極め方

これまでにもお伝えした通り、AIはある意味とても都合よく働いてくれます。そのため、ポイントになるのは、「外注化」と「AI活用」のどちらか?と考えるのではなく、両方を包含して「自分一人で抱えすぎず、効率的かつラクに成果を出すための方法論は何か?」と考えることです。

「外注化」と「AI活用」の見極め方のフレームワーク

私の見極め方を例としてお見せします。

  • 「自分が苦手・スキル不足」→ 外注化
  • 「スピード勝負、かつ比較的シンプル」→ AI
  • 「自分の頭からタスクを切り離したい(精神的リソースを確保したい)」→ 外注化
  • 「予算は限られるが大量生産したい」→ AIメイン
  • 「外注化の前に粗く作ってみたい」→ AI
  • 「人間味が必要」→ 外注化

こんなふうに、一つ一つのタスクを「AIで済ませるべきか」「それでも人間に頼む価値があるか」を判断するのがおすすめです。

リソースの限られた個人事業主や中小企業経営者にとって、「外注化のメリットは脳のリソースの開放」、「AIの良さはスピードとコストの安さ」です。

6.私のAI活用(2025年4月初旬現在)

かつて外注化していたもののうち、生成AIに切り替えたタスクがあります。ここで使っている生成AIは現時点で無料で使えるものばかりです。

Udemyコースの文字起こしを取得してブログ記事の原稿を作る

  1. レクチャー動画をYouTubeにアップロード(非公開)
  2. Google Chrome拡張機能 Glaspで文字起こしを取得(公開動画なら、notebookLMでも OK)
  3. Google AI studio(Gemini)に渡して文章を整えてもらい、見出しをつける

音声配信をブログ記事の原稿にする

  • 文字起こしの取得
    • mp3ファイルがある場合
      • Google AI studio(Gemini)にアップロードして文字起こし
      • notebookLMまたはGemini、nottaにアップロードして文字起こし
    • mp3ファイルがない場合(ライブ配信など)
      • プラットフォームからmp3ファイルとしてエクスポートする
      • エクスポートできない場合は再生しながら画面録画してmp4ファイルを作成する
        • mp4ファイルをGoogle AI studio(Gemini)にアップロードして文字起こし
  • (共通)Google AI studio(Gemini)で話し言葉を書き言葉にする

YouTube動画をブログ記事の原稿にする

  • 文字起こしの取得
    • 公開動画
      • notebookLMにソースとしてYouTubeのURLを入力する
        • 自動で取得されたトランスクリプトを整形する
      • Google AI studio(Gemini)にソースとしてYouTubeのURLを入力する
        • 「完全な文字起こしを取得して。」
    • 限定公開の場合で手元にmp4ファイルがある場合
      • Google AI studio(Gemini)にアップロードして文字起こし

※本記事をご覧になるタイミングによっては、AIに任せられる部分がもっと増えているかもしれません。

このように、「AIの良さはスピードとコストの安さ」であることを選んで、コンテンツの再利用には生成AIを使います。

しかし、最終的なチェックとWordPressへの入稿は人の目や手が必要です。そしてそのタスクは私でなければできないものではありません。外注化のメリットは「脳のリソースの開放」であるため、最終的なチェックとWordPressへの入稿は外注化しています。

次章以降では、AIに任せられない部分をどこでどうやって外注化するかについてお伝えします。