オンラインの世界では、音声や動画などさまざまなコミュニケーション方法がありますが、基本はテキスト、つまり文字でのコミュニケーションが多いのではないでしょうか。 音声や動画も元をたどれば文字がベースになっているわけですが、私はテキストコミュニケーションが一番難しいと思っています。なぜなら、情報量が少ないからです。
視覚情報がない音声、さらに情報が限られるテキスト
動画で顔を出してコミュニケーションする場合は、黙っていても表情や雰囲気などが伝わります。 しかし、音声になると視覚情報が失われます。 ただ、音声には声の表情があります。怒っているのか、笑っているのか、冷静なのか。 声のトーンによって、文字だけの情報よりも相手の感情を判断しやすい面があります。
例えば、文字にすると厳しいことを言っているように見えても、声のトーンが和やかであれば、相手に与える印象は大きく変わります。 しかし、それを単純にテキストにしてしまうと、ただ強いだけの言葉になってしまうことがあります。 そのため、最も難易度が高いのは、文字だけのコミュニケーションだと私は考えています。
テキストコミュニケーションの難しさは誤解が生じやすいこと
テキストコミュニケーションが難しいのは、相手がどう受け取るか、こちらがどういう意図で発信するかは、こちらにしかわからないからです。 そして、相手がどういう意図でその文章を送ってきたのかも、やはり相手にしかわからない部分があります。
言葉足らずも起こりやすいです。 音声コンテンツや動画コンテンツでは、表情や声のトーンなど、言葉以外の情報が言葉足らずを補ってくれます。 また、同期型のコミュニケーション、つまり通話(音声通話やビデオ通話)の場合は、「それどういう意味?」とその場で確認できます。
しかし、テキストコミュニケーションの場合、基本的には非同期型です。 ライブチャットであれば別ですが、通常はチャットやメールでやり取りするため、タイミングが同時ではありません。 そのため、そこに書かれていないことはわからず、言葉足らずによって行き違いが起こりやすくなります。
「言わないと気が済まないことは、言わない方がいい」
数日前にXで、こんなポストを見かけました。
「うまく生きていくためには、言わないと物事が前に進まないことは恐れずにちゃんと言った方がいいが、言わないと気が済まないことは基本的に言わない方がいい。マジで」
上手く生きていくためには、「言わないと物事が前に進まないこと」は恐れずにちゃんと言った方がいいが、「言わないと気が済まないこと」は基本的に言わない方がいい。マジで。
— スーホ (@sukhswhitehorse) January 4, 2025
思い当たること、ありませんか? 言わないと気が済まないこと、たくさんありますよね。 家族間でも、仕事でも、少なからずあると思います。
しかし、一度発した言葉は戻ってきません。 私は、できるだけネガティブな言葉を公には発しないように鍵アカウントで個人的なログを取っていますが、そこにすら残したくないと思うこともあります。 言わないと気が済まないことを文字にしてしまうと、それが目に入って、嫌な気持ちを繰り返し味わうことになります。 自分で自分を傷つけるようなものです。
ブラックな感情は秘密の場所に吐き出す
私は、毎日ボイスログを取っています。 その日の出来事や考えたこと、アイデアなどを記録しています。 そのログは聞き返すことがあるため、言わないと気が済まないことが出てきたときは、ファイルを分けて「ブラックなトーク」専用のファイルを作ります。 そして、それはもうブラック扱いとして、タイトルを見れば何を言っているかがわかるようにし、聞き返さないようにしています。 それは、吐き捨てるための場所、自分の排気口のようなものです。
公共の場、例えばSNS、ポッドキャスト、YouTube、ブログ、コミュニティなどでは、特に注意が必要です。 コミュニティの投稿を消したとしても、見ている人は見ていますし、スクリーンショットを撮る人もいます。 オンラインでビジネスをしている人はもちろん、そうでない人もオンラインを使う以上、「言わないと気が済まないこと」は言わないに越したことはありません。 対面で接するよりも、大人な対応を心がける必要があると日々感じています。
直情型だった私がテキストコミュニケーションで気を付けるようになった理由
私はもともと直情型な性格でした。 作業療法士をしていたとき、職場で上司や院長など、自分より上の立場の人に対して感情的になり、上司が謝罪するような場面もありました。 また、上司から「中野さんって意外と直情型なのね」と言われて、初めて自分の性格に気付いたこともあります。
それは対面だから、その場の空気や文脈があって何とかなっていた部分がありました。 しかし、オンラインでのコミュニケーション、特にテキストコミュニケーションでは、より一層気を付けるようになりました。
クラウドワーカーさんから学ぶ日本的なコミュニケーション
私のポッドキャストの文字起こしやリライトをしてくれているクラウドワーカーさんは、テキストコミュニケーションがとても上手で、人柄も素晴らしい方です。 「こういう言い方があるのか」と学ぶことが多く、心地よいので長期間お仕事をお願いしています。
私は失礼なことを言ったり、無茶なお願いをしたり、ミスをしたりすることもあります。 しかし、その方はいつも非常に柔らかい言葉で指摘してくださいます。 そのコミュニケーションの取り方は、非常に日本的だと感じます。
例えば、「中野さん、もしかしてここがこうなっているかもしれません。ご確認いただけますか?」というように、やんわりと、どちらかというと遠回しに指摘してくださいます。 そのため、ミスをしたことに気づいても、こちらも素直に聞き入れやすいのです。
海外在住の日本語話者とのテキストコミュニケーションで感じる文化の違い
日本語話者の方で海外移住された方とテキストでやり取りをすると、表現が非常に直接的だと感じることがあります。 普段の生活で使う言語が、日本語に比べて直接的な表現をする言語(例えば英語など)であることが影響しているのかもしれません。
以前、英語圏ではない国に住み、英語で生活している方とやり取りをしたときのことです。 通話ではとても丁寧で気遣いのある話し方をされるのに、テキストになった途端に「琴子さん、この箇所がこうなっています。ご確認ください」というような、まるで指示されているかのような文面になっており、驚いたことがあります。
もちろん、全員がそうではありません。 しかし、ニュアンスを含ませたり、相手を思いやるという意味で、テキストコミュニケーションは非常に難しいのだと改めて感じました。
テキストコミュニケーション能力を鍛えることの重要性
もしあなたが、動画での説明は得意でも、テキストで説明するのが苦手だと感じているなら、テキストコミュニケーション能力を鍛えることをおすすめします。
クラウドワーカーさんとのコミュニケーションは動画でも良いかもしれません。 しかし、言語化能力が低いままだと、今後テキストコンテンツを作るときや、テキストコミュニケーションだけでしかやり取りができない状況になったときに、非常に苦労する可能性があります。
テキストコミュニケーションの行き違いは、修正するまでに時間がかかり、お互いのリソースを消耗します。 仕事相手としては良かったはずなのに、コミュニケーションが原因で一緒に仕事ができなくなるのは、非常にもったいないことです。
言語化トレーニングのススメ
画面収録動画を使うのも良いですが、「これを言語化して文章で伝えるとしたら、どうやって伝えたら良いだろう?」ということを一定期間トレーニングすると良いでしょう。 また、日頃から素敵な言い回しをする人を見つけたら、その言い方を学び、自分のレパートリーに加えていくのがおすすめです。 そうすることで、「こういう言い方をすると相手が気持ち良いんだな」ということを、経験として蓄積していくことができます。
今回は、テキストコミュニケーションについてお話ししました。それでは、また。