作業療法士の私がオンラインビジネスをやっている理由

Patient doing exercises for memory improving indoors

目次

このエピソードでは私の仕事や職歴、今していることとの関連性についてお話します。なぜ作業療法士の私がオンラインビジネスをやっているのか?という理由を説明したいと思います。

3年間寝ずに勉強した作業療法士の私が、なぜオンラインビジネス?

私のブログにある「My roots」というページにも書いていますが、大前提として私は作業療法士という仕事が大好きで、天職だと感じています。そう思っているにも関わらず、なぜ現場で働いていないのか?という疑問もあるかと思いますので、その理由を説明していきます。

時間がないはずなのに…副業する療法士への違和感

最近 SNS や YouTube などで、「理学療法士です」「作業療法士です」と言いながら、ブログアフィリエイトや在宅ワーク系の情報発信をしている人を見かけます。正直に言うと、私はそういう人たちをあまり良く思いません。副業でオンラインビジネスをする余裕がどこにあるのか、理解ができないからです。本業に集中していたらそんなことをする時間はないはずです。もしかしたら彼らは非常に優秀なのかもしれませんが、私には到底考えられません。

私は3年間専門課程で朝から晩まで文字通り寝ないで勉強し、やっとの思いで国家試験に合格しました。そんな努力を経て合格したにもかかわらず、現場に出たばかりの頃は全く使い物にならないと感じました。今でもその時の感覚は忘れられません。

3年目になってもまだまだ自転車操業のような日々

同期「さあ子」との会話:3年目の不安

同期で「さあ子」(仮名)と呼んでいる友人がいます。当時彼女は滋賀に、私は大阪に住んでいたので、中間地点の京都で食事をすることになりました。お酒が入りいい感じに酔ってきた頃のことです。

さあ子とはクラスでは異なるグループにいましたが、実習先が一緒だったり作業療法に対する考えが似ていたりと気の合う仲でした。そんな彼女がふと、「なぁことちゃん、どうしよう、私たちもう3年目になってしまった……」と言ったのです。

その言葉はまさに、私の心の中の声でした。作業療法士にとって経験年数3年は、一つの節目です。3年、5年、10年というように、特別なタイミングがあります。3年目ともなると、もう新人扱いではありません。

しかし実際に一人前と言えるほどの仕事をしているかと問われれば……正直、全然そんなことはありませんでした。そのことに恐怖を感じていたのも事実です。さあ子の「どうしよう」という言葉は、私の心の叫びでもありました。「ほんまにそうやねん…!」と、お互いの不安を語り合ったときのことを、今でも鮮明に覚えています。

経験を積んでも余裕ができるわけではない

作業療法士として5年、10年と経験を積み、一人前になったかと言われると状況はそれほど変わりませんでした。ずっと自転車操業のような毎日です。もちろん患者さんやご家族とのコミュニケーション、 あるいは「この疾患なら、このタイミングでこのトレーニング」といった経験値は積み重ねてきました。

知らない病気の人も来る、だからずっと勉強しなきゃいけない

世の中には驚くほど多様な病気や怪我があり、時には教科書でしか見たことのない、珍しい疾患の患者さんがリハビリにいらっしゃることがあります(ここで「いらっしゃる」というのは、医師からリハビリの処方箋が送られてくることを指します)。実際の臨床では、これまで見たことのない病名が並ぶことも少なくありません。教科書や国家試験で少し触れただけの病気の患者さんが来ることもあるのです。

そうした場合でも作業療法士や理学療法士として、まず初回のアセスメント(初回評価)を行います。患者さんが現在どのような困難を抱えているのか、その原因を見極め今後の経過を予測します。3ヶ月後や1年後にどうなるかを見通し、必要な訓練内容や患者さんとご家族の要望をどのように優先するかを話し合います。患者さんごとに障害の種類や程度が異なるため、個々に合ったオーダーメイドの評価を行い、訓練プログラムを立てます。また定期的に評価を見直して次のステップを考え、そのプロセスを繰り返していきます。

しかし見たことのない疾患の場合、その方の体内で何が起こっているのか、どのような経過をたどるのかの知識がないまま処方箋が来ることもあります。その際は誰が担当するかで少しざわめきが生じますが、順番に担当します。珍しい病気にあたることは、それほど珍しいことではありません。特に総合病院に勤務しているとそれが日常の一部です。

ですから初回面接では患者さんの背景や病気に至った経緯を伺い、「明日から体の状態を拝見していきますね」と一度帰っていただきます。その後必死で勉強します。その疾患に関して、予想される進行状況や手術の詳細を調べます。そして翌日必要な評価を行うために準備をします。社会人になってからも、寝る間を惜しんで勉強することが多いです。

ごめんなさい、私は副業をしているセラピストが嫌いです

そういう意味では本当に自転車操業のような日々だったのです。10年、15年、20年経っても、副業をする余裕などありませんでした。だからこそ、副業でオンラインビジネスをしている人たちの余裕が理解できないのです。

中には、3年くらいで作業療法士を辞めて、在宅ワークをしている人もいます。特に作業療法士は理学療法士に比べて女性の割合が高いため、結婚や出産を機に退職する人が少なくありません。結婚後も仕事を続けていても妊娠・出産で休職し、そのまま退職してしまうケースや育休明けに復帰しても続けられずに退職するケースも多いです。もちろんそれぞれの事情があるので、責めることはできません。家庭の事情で続けられなくなった人もいるでしょう。私も結婚退職したうちの一人なので、その事情はよくわかります。臨床を離れているなら何をしてもいいと思います。患者さんやご家族への責任を負っていないから。

しかし兼業で副業としてオンラインビジネスをしている人たちは、私にはどうしても好きになれません。そんな余裕があるはずがないと思ってしまうのです。もしかしたら私の考え方は古いのかもしれません。

患者さんの言葉と、社会との繋がりの壁

オンラインビジネスを始めた理由

では「なぜあなたは作業療法士なのにオンラインビジネスをやっているのか?」その理由をどこかで説明しなければ、と考えて作成したのが私のウェブサイトの「My roots」という文章です。少し前振りが長くなりましたが、ここで私の原点についてお話したいと思います。

「こんなことになるなら、命が助からない方がよかった」

私が作業療法士の免許を取得して最初に勤めたのは、診療所でした。当時としては珍しく、老人デイケアや訪問看護、往診、訪問リハビリテーションを先駆けて行っていました。(その診療所で訪問リハビリテーションを始めたのは、私が最初です。)訪問リハビリを始める前は、病院で「もうやることがない」と言われて退院した患者さんたちが通う場所として、通院リハビリを提供していました。そこである患者さんに言われた言葉が、今でも忘れられません。

「先生には悪いけど、こんなことになるなら命が助からない方がよかった。命が助かってもこんな生活しか送れないなら、生きている意味がない。」

その方は40代の男性で脳梗塞(脳卒中)で半身不随になり、復職することも自分で食事をとることもできず、家にいるしかありませんでした。かつては大黒柱だったにもかかわらず、社会的な役割を全て失い、家から出ることもままならない状態でした。それまで専業主婦だった奥さんが代わりに働きに出るようになり、彼は昼も夜もずっと家にいるだけの生活になってしまったのです。自尊心を失い、全てがボロボロになってしまったのでしょう。「こんな思いをするくらいなら、命が助からない方がよかった。それくらい苦しい。」

その言葉は、私にとって衝撃でした。当時は Windows も普及しておらず、インターネットも一般的ではありませんでした。携帯電話はもちろん、スマホもありません。ワープロさえ打てなかった時代です。家にこもってしまったら、テレビを見るくらいしかやることがありません。誰とも話さず誰とも会わず、ただ太陽が昇って沈むのを繰り返すだけの毎日。良くなる見込みもなく、その繰り返しは永遠に続く。それは拷問に等しいのだと、その患者さんから教わりました。

社会福祉制度の限界、「制度の谷間」

在宅リハビリテーションの作業療法士として、何かできることはないかと考え、地域の保健師さんと相談しながらさまざまな取り組みを試みました。しかし制度が追いついていなかったり、使える制度がなかったりと社会と繋がる手段もなく、結局何も役に立てませんでした。

その後、介護保険制度や障害者総合支援法ができました。救われる疾患も増えましたが、全てのケースをカバーできるわけではありません。国の財源や制度の制限があり、制度の谷間に落ちてしまう疾患の人が多くいます。難病指定や総合支援法の対象となる疾患はほんの一部に過ぎず、実際にはそれ以外の病気や障害を抱えている人の方がはるかに多いのです。ほとんどの人は、これらの制度の恩恵を受けられないと思った方がいいでしょう。もちろん高齢になれば、また状況は変わってきます。

技術大国ニッポンなのに…もどかしい想い

20代の頃から、私はずっと考えていました。日本は技術大国なのだから、もっと技術で解決できることがあるのではないか?しかし企業にとっては、たくさん売れるわけではない、つまりお金にならないからといって、ほんの一握りの人しか使えないような高額な装置やコミュニケーション機器の開発は進まない。でも、何かできることがあるはずだ、と、もどかしい思いでいっぱいでした。

インターネット、そしてスマートフォンの登場

インターネットの登場と患者会

時が経つにつれて、通信インフラが劇的に良くなっていきました。Windows の登場によりメールのやり取りが可能になり、インターネットで遠く離れた人々の情報にアクセスできるようになったのです。これにより、マスメディア以外の情報も簡単に検索できるようになりました。この変化に患者さんたちが本当に目を輝かせていたのを覚えています。

当時はまだパソコンが一般的ではありませんでしたが、ある関節リウマチの患者さんが、「先生、私たち患者がメールで繋がることってできないでしょうか?」と聞いてきたのです。私は「きっとできると思います」と答えたのを覚えています。その後、ホームページを持つ患者会が次々と誕生していきました。

スマートフォンはゲームチェンジャーだ

今では通信インフラはさらに進化し、パソコンだけでなくスマートフォンも普及しています。スマートフォンは大きなゲームチェンジャーであり、手のひらの中で世界中と繋がれるようになりました。通信コストも大幅に下がり、かつては従量課金で高額だった通信が今では安価で利用できます。

かつて「テレビ電話」と呼ばれていたような、face to face でのコミュニケーションができる Zoom のようなサービスもたくさん登場し、社会との繋がりが容易になりました。それに伴って、個人による情報発信や起業も盛んになりました。

自宅でたった10分でも働ける!多様な働き方が可能になった

私の仕事を手伝ってくれているクラウドワーカーさんの中には、「月に2時間だけ働きたい」という人もいます。体の事情や子育てなどで、「1日に10分しか働けないけれど、それを積み重ねて月に2時間働きたい」と言うのです。スマートフォンの普及前は、そんな働き方は不可能でした。しかし今ではそれが可能になり、スマートフォンでできる仕事であれば、布団に横になった状態でもこなすことができます。制度や病気は変わらず医療が進まなくても、通信インフラの変化は大きな影響を与えました。

「病気や障害は意味がある」だと?私はそうは思いません

外野が言う「すべてに意味がある」は綺麗事

よく「病気になったからこそ出会えた人がいる」「障害を持ったことで、人の優しさに触れることができた」「人生で起こることには、すべて意味がある」と、こういった言葉を耳にすることがあります。特に私が苦手なのは、「神様は乗り越えられない試練は与えない。あなたも乗り越えられるわよ!」といった、外野からの励ましです。正直、「何を言っているんだろう」と思ってしまいます。

もし当事者の方がご自身でそう感じていらっしゃるなら、それはそれで尊重すべきでしょう。しかしそう思えない時期もあるはずです。むしろそう思えない状況の方が長く続くことだって、珍しくありません。誰だってずっと健康でいられる方がいいと思います。病気や怪我なんて、ない方が良いに決まっています。

だからこそ、当事者の方やご家族に「すべてに意味がある」といった綺麗事を押し付けるのは違うと思うのです。「病気にならなければよかった」「怪我をしなければよかった」というのが本音です。

絶望ではなく「悪くない」と思える人生へ

だからといって引き下がりたくない私がいます。病気や怪我は自分でコントロールできない部分があります。事故に遭ったり、ある日突然予期せぬ病気を発症したり、余命宣告を受けたり、進行性の難病と診断されたりすることもあります。しかし抗えない運命だとしても、「こんなことになるなら助からない方がよかった」と絶望するのではなく、「病気や障害はつらいけれど、この人生も悪くない」と思えるようになってほしい。少しでもそう感じてもらえるようにお手伝いがしたい、と思っています。

思うように生きられない、すべての人へ

結婚退職、そして奈良での現実

私自身は結婚・退職し、家庭の事情で作業療法士として現場に戻ることはありませんが、インターネットを使うようになって、思うように生きられないのは病気や障害を抱える人だけではないことに気づきました。子育てや介護で外に出たくても出られない人、やりたくない仕事、向いていない仕事から抜け出せないでいる人もいます。

かつての私もそうでした。結婚退職した時、「仕事なんてすぐ見つかるでしょ」と軽く考えていたんです。でも奈良は病院も少なく、求人もほとんどない。知識も経験もある、働きたいのに働ける場所がない……そんな悶々とした日々を送っていました。きっと今もそうやって「思うように生きられない」と悩んでいる人がいるはずです。

働きたいのに働けない、そんなあなたへ

そんな思うように生きられない人たちの力になりたい。作業療法士としての経験、そして私の人生経験を活かして、お手伝いができたら良いなと考えています。あなたがあなたらしく生きるためのツールとして「インターネット」そして「オンライン」を活用できるようお手伝いがしたい。それが私の今の仕事です。

あなたの経験は、必ず誰かの役に立つ

なぜオンラインコースなのか、なぜ情報発信なのか?それは、「あなた個人の経験は必ず誰かの役に立つ」という信念があるからです。(この話は、また別の機会にお話したいと思います。)

なので IT の専門用語が苦手でも大丈夫です。自分の知識や経験を活かしてビジネスをしたい、ビジネスをスケールさせたいという方のサポートをしたいと思っています。

それではまたお会いしましょう。